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  • Kaori Uetake

ナッジプロジェクトを成功させる5つのスキル

更新日:2023年2月1日

ナッジは自分の事業にも役に立ちそうだから使ってみたい。でも、具体的にどう進めていったらよいかわからない・・・


そんなご相談を行政の方から受けることがあります。


本記事では、英国行動インサイトチーム(BIT)が挙げる「ナッジプロジェクトを成功させる5つのスキル」について、日本の自治体でナッジプロジェクトを実施してきた経験を踏まえて私自身の視点から解説していきたいと思います。


BITは、これまで1,000件以上のプロジェクトを世界中の政府や民間組織などと行ってきたナッジの政策活用の第一人者で、「ナッジプロジェクトを成功させる5つのスキル」を次のとおり挙げています。


(1)プロジェクト管理


(2)関係者との調整(エンゲージメント)


(3)政策知識


(4)行動インサイト(行動科学の知見)の活用


(5)データ分析



これらの要素をしっかり把握し、プロジェクトの企画や座組みを検討することで、プロジェクトを成功に近づけることができます。


では、早速一つずつ見ていきましょう。



(1)プロジェクト管理


プロジェクトの全体像を高い視点から把握し、日々の進行管理や適切な人員配置を行うスキルです。


ナッジプロジェクトに限らず、通常の業務でも必要なスキルなので、イメージしやすいかと思います。




(2)関係者との調整(エンゲージメント)

プロジェクトに必要な支援や承認を得ることができるようなネットワークと影響力を持ち、プロジェクト関係者間の調整を行うスキルです。

ナッジプロジェクトがスムーズに実施できるよう、さまざまな分野の関係者の間に入り、いわば「翻訳家」のような役割を果たします。各関係者の意向や状況を理解した上で、他の関係者にわかるような言葉で伝え、プロジェクト実施に向けて合意形成を行っていき、プロジェクトの実現・完遂をサポートします。


ナッジプロジェクトの関係者は大きく分けて2つです。


  1. ナッジ実施フィールドの関係者

  例えば、ナッジを活用した取り組みを

  ・小学校で行う場合→教育委員会や小学校の校長先生、担任の先生

  ・店舗にて行う場合→店舗のオーナー、店長や従業員

  ・市民に対して行う場合→地域の町内会や自治会の関係者、市民グループの関係者など

  です。


2. 外部支援者

  専門知識に基づいて支援を行うコンサルタントや大学研究者などです。


これらの関係者は、必ずしも同じ価値観や課題意識、行動論理を持っているとは限りません。

・彼らが(彼らの業界で)課題と考えていることは何か

・彼らが最も重要だと考えていることは何か

・彼らは(彼らの業界で)どんな立場か、どのようなステークホルダーがいるか

・彼らがこのプロジェクトに関わるメリットは何か

信頼されるエンゲージメントのためには、以上のことを踏まえることが重要です。

このような調整業務自体は行政にとっては日常的な業務とも言えますが、1つ気を付けるべきなのは、ナッジ的なアプローチはまだ目新しいものであるために、ある意味感情的な拒否反応を示す方もいるということです。


できれば前向きな人や組織と組むことが望ましいですが、どうしても説得しなければならない場合は、次のようなことを伝えてみることで態度が軟化する場合もあります。


・これまでのやり方を否定しているのではなく、さらに良くするために取り入れる

・すでに相手が実践していることもナッジの要素を含んでいる

・提唱者はノーベル経済学賞を受賞しており、国連や海外の政府機関で取り入れられている

・国内(同じ地方内、県内)の他の自治体も取り組んでいる

・効果検証を行って、仮に効果が見られなかったとしても、施策を改善していくための重要な手がかりになるので無駄にはならない(「効果が出なければ失敗」というわけではない)


無事にプロジェクトが組成され、実施段階になっても調整は続きます。関係者間で価値観や譲れない点が異なる場合も多々あります。プロジェクトを進めるためには、相手の意向を尊重したり、お互い譲歩したりする必要が出てきます。それぞれの立場や価値観を理解しておくこと、そしてそういったことを受け入れる柔軟性のあるパートナーを見つけることが重要です。



(3)政策知識

当該政策分野における現状や政策課題についての知識です。


その政策分野における、

・既存の政策の概要

・今、特にどの政策課題の解決が求められているか

・その際のボトルネックが何か

といった政策知識や、

・政策に影響力を持っている人や組織はどこか

・協力してくれそうな具体的なステークホルダーは誰か

などの政策関連知識を持ち合わせている必要があります。




(4)行動インサイト

ターゲット行動や文脈にあったナッジ介入案を考案・実施するために、行動インサイト(行動科学の知見)を活用するスキルです。


具体的には、

・行動科学で用いられる基本的な概念の理解

・方法論の使い方

・倫理的配慮などの注意点

・国内外の事例

などについて、十分に理解していることが求められます。


行動経済学や心理学のバックグラウンドがあると望ましいですが、BITやOECDの発行するガイドブックなどを活用すれば、独学でも基礎的な知識を身に付けることは可能です。


それに加えて、最前線の事例や手法をよく見ておく必要があります。最新の事例は、次のようなウェブサイトから入手することができます。


日本国内の事例なら


海外の事例なら

iNudgeyou(デンマーク)

ideas42 (米国)


また、さらに詳しく調べたい場合は、国内外の論文を

にキーワードを入力して探すことができます。

(例:省エネ ナッジ, nudge energy conservation など)


その分野のメタ分析の論文を探すのも良いでしょう。大きな傾向としてエビデンスの有用度を得ることができます。ただ、実践する際には1つ1つの論文に当たった方が具体的なイメージが湧くのと、考えられるボトルネックも想定しやすくなるので、シチュエーションや文脈が近い論文があればそれも目を通すことをお勧めします。



(5)データ分析

統計学や定量的データ分析、インパクト評価に関するスキルです。



あるナッジが目的の行動の促進に役立っているのかを判断するため、また、政策として導入する場合の効果を見極めるための重要なスキルです。


とり得る効果検証手法にもよりますが、高度に専門的な分野であるため、外部への業務委託や大学研究者との共同研究といった形で補完することが多いです。


現状、行政現場で行われるものとしては、次のような分析方法が用いられることが多いです。

ランダム化比較試験(RCT): 数が多く, 個人単位で介入群/対照群にランダム割当できる場合に用いる(例:個人に郵送される通知など)

クラスターRCT: 個人ではなく一定の単位で介入群/対照群にランダム割当する場合に用いる(例:学校単位、町内会単位で介入を行う場合)

差の差分析: 平行トレンド(評価項目が同じような推移を示す)を持つ2つの群を設定し、 1つを介入群、もう1つを対照群として、介入前後の結果を比較することで介入の効果を推定する

前後比較:エビデンスレベルは下がるものの, 対照群が全く設定できない場合や、プロトタイプの検証に用いられることも。介入前ー介入後のみの計測だと交絡因子(介入以外の条件)の違いが正確に測定できないため、少なくとも介入前(ベースライン)ー介入中ー介入後の3点で計測することが望ましい


介入効果の測定という観点ではRCTが最も厳密ですが、プロジェクトの性質や対象者によっては実施が困難な場合もあります。そのような場合、他の手法を用いて検証することが考えられます。いずれにしろ、実施にあたってのコストや実現可能性を考慮することが必要です。



スキルの分類


ここまで5つのスキルを紹介してきました。


これらのスキルについて、下記の3つの分類してみましょう。

(1)すでにチーム内にあるスキル

(2)今はないが、これから内部採用が可能なスキル

(3)外部へのサポート依頼が必要なスキル


行政で初めてナッジプロジェクトを行う場合は、このような分類になることが多いのではないでしょうか。



この表のとおり、最初の取り組みでは、

(4)行動インサイト(行動科学の知見)

(5)データ分析

について、外部からの支援を得ることが現実的かと思います。


プロジェクトの実施に加え、ナッジ研修やワークショップを受講することで、行動インサイトの活用スキルは高まっていきます。


プロジェクトの規模や種類にもよりますが、いくつかのプロジェクトを経験すると、勘所がわかるようになり、外部のサポートに頼らずとも進められるプロジェクトも増えてきます。


政策分野や課題が違っても基本的な流れは同じなので、組織内での横展開も容易です。



まとめ


ナッジを活用して政策課題の解決に挑戦してみたいが、やり方がわからず一歩踏み出せずにいる・・・


そんな方に向けて、BITが挙げる「ナッジプロジェクトを成功させる5つのスキル」について、自らの経験に基づいて解説してきました。


(1)プロジェクト管理


(2)関係者との調整(エンゲージメント)


(3)政策知識


(4)行動インサイト(行動科学の知見)の活用


(5)データ分析


最初にナッジプロジェクトを実践する際におすすめなのは、下記について外部のサポートを受けることです。

(4)行動インサイト活用

(5)データ分析


なお、部署内で十分な人員をつけられない場合は、(1)プロジェクト管理も外部委託することをおすすめします。


日本でのナッジの活用事例は、環境分野や健康分野に多いですが、海外の事例に目を向けると、

・SDGs

・防災

・交通安全

・ジェンダー(女性の経済的自立)

などの分野においても、すでに多くの取り組みが行われています。


政策課題の解決に行き詰まっている…そんな場合は、ナッジが役に立つかもしれません。


ぜひ、ナッジの活用も選択肢の一つに入れてみてください。




参考文献

Behavioural Insights Team (2022) Building BI Capacity within government


 

あなたの組織でもナッジによる行動促進スキルを取り入れてみませんか?


ポリシーナッジデザイン合同会社では、ナッジプロジェクトの企画・実行・フォローアップを支援しています。形式は、業務委託契約・アドバイザー契約・共同研究型などアレンジできます。また、ナッジ研修・ワークショップと組み合わせることも可能です。


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